439号・モノレール・旅の終わり【鬱になったから西を目指した(3)】

投稿日:5月 4, 2020 更新日:

ー鬱になったから西を目指した(2)ー

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徳島から四国山地を縫うように走った。

目的地はもうわかっていなかった。でも、少しずつ頭の中のモヤが晴れていくような感覚があった。

以下の話は、その時に書いていた手記を基に書く。

439号線。山の中のモノレール

劔山の麓の見ノ越で途中経過を書いた。

そこで国道438号と別れ、439号に入った。

ガードレールは当たり前のようになく、ただ民家も対向車もなかった。

ここからはなんとなく高知の桂浜へ行こうと思った。特に意味はなかったが。

酷道をひた走ると、東祖谷山という小さな村に出た。

林を走るモノレールがあるようだった。なかなか面白そうだな、なんて思った。

特に行く宛てもなかったので、寄り道をすることにした。

立ち寄ると、小さなモノレールが何両か止まっていた。

聞くと、今日がたまたま今年の営業初日とのこと。もう少ししたら試運転が終わるからちょっと待ってほしいと言われ、数十分待つ。試運転1号機が戻ってくると、一周一時間以上かかる旨と、止まったら無線連絡をするように言われ、送り出された。

春になったばかりの林はまだ寒く、ただそれでも小さな白い花が沿線の至る所に咲いていた。モノレールは木々の隙間をすり抜けるように走った。1500m近い標高の最高地点から見る景色は、綺麗だった。

私はぼーっとモノレールに乗りながら、今後の身の振り方について考えた。考えて、考えて、わかんねえな、と。

降りてから、係員のおっちゃんたちにありがとう! と言われ、それはこっちのセリフだ! なんて思った。まあ、最悪どうにもならなかったらどこかの村に拾ってもらおう、なんて考えた。ちょっと前向きに考えられた自分に驚いた。

併設されている温泉施設に入った。

今日ちょっと源泉の温度低くて、ちょっとぬるいんです。なんて謝られたけれど、逆に長風呂するにはちょうどよかった。

なにも考えず、頭から温泉をかぶり続けた。大浴場は誰もおらず、一人で思案し続けた。桂浜に行くのはやめにしよう。尾道でラーメンでも食って帰ろう。そんなことを考えた。

(祖谷温泉にて)

ただ、無心で走り続けた

温泉を出てからまた439号をひた走り、京柱峠を抜けた。

あと何年か早くきていれば猪肉うどんが食えたのにな。惜しいことをした。

ここからのびている未舗装林道を少しだけ覗いて、そこから高知県に入った。大豊町の中心部に出てから、愛媛方面に向かう国道319号に入った。

私は怒られることを病的に恐れていた。それが原因かもな、なんて思った。これ、直さないとな。

徳島から高知経由で酷道を横断して、愛媛県道6号に入った。今日一番走りやすい道で、どうなってんだよ、なんて思った。別子山は面白そうな場所で、至る所に鉱山の跡があった。

また落ち着いたら来てみよう、なんて。

(マイントピア別子にて)

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この手記はここで終わる。

この時の私の行動は決して真似をするべきことではない。今から思えば猛スピードで酷道を疾走していたし、いつ死んでもおかしくないようなことをしていた。

ただ道を走っている時は余計なことを考えなかったことも事実だった。

この記録が何かの役に立つことはないだろう。ただ、この記録を残させてくれた管理人に、感謝したい。

<TEXT/お酒菜>

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