アメリカ村の珍百景。「21世紀のリニアエレベーター」は本当にリニアで動いていた

投稿日:3月 16, 2020 更新日:

 大阪のカルチャータウンこと、アメリカ村(=アメ村)。道頓堀から程なく広がるこの一帯は、古着や音楽、グルメの聖地として古くから若者に愛されてきた。

 そんなアメリカ村を歩いていると、煌びやかな街並みに紛れて、何やら不思議な建物が目に飛び込んでくる。

ビルには「21世期のリニアエレベーター」とかかれた看板が

 それがこちら。リーバイスストア・大阪店の向かい。堂々と黄色い看板が掲げられた雑居ビルだ。その看板を読み上げると、「21世紀のリニアエレベーター」という謳い文句。

 に……21世紀の、リニアエレベーター……?

アメリカ村にある、謎のリニアエレベーター

ビルには円筒状のエレベーターが確認できる

 問題の建物がこちら。綺麗な曲線を持ったガラス張りのビルディングだ。古い建物なのか、全体的にかなりくたびれている。どうやら営業しているのは一階の古着屋だけで、2階から先は空きテナントになっているようだ。

 屋上を見上げると、アメリカの国旗を背景にして「黄色いリボン」と書かれた看板が目に付く。不動産情報によると、このビルの正式名称は「黄色いリボンビル」というらしい。70年代にアメリカで、幸せの黄色いリボンという楽曲が流行したそうで、これに因んで名付けられたのだろう。

 何やらビルの角にはエレベーターと思しき円筒状の柱が確認できるが、これが例の“リニアエレベーター”とやらなのだろうか。

ビルの店員さんに話を聞いてみた

店内からはエレベーターのドアが確認できた

 正体を確認すべく、古着屋さんにお邪魔してみた。左右を90年代のストリートな古着たちに挟まれながら縫うように店内を進むと……あった!これか。

 ハンガーラックに埋もれているが、確かにエレベーターのドアがある。位置からも、外から確認できた円筒状の柱がこのエレベーターとみて間違いないだろう。しげしげと眺めていると、古着屋の店員さんが声をかけてきた。

「お兄さん、アディダスはあっちね。ナイキはこっち」

 折角なので便乗して聞いてみた。

「このエレベーターって、表の“リニアエレベーター”ってやつですか?」

「あー、あれ……もう使ってないのよ」

「これって、リニアモーターで動いてるんですか?」

「いやー、わっからへんね、ハハハ……」

 店員さん苦笑い。俺、完璧に不審者である。これ以上聞いたところで迷惑なので、軽く店内を物色して店を後にした。本当にすいません。

実は世界初。リニアエレベーターの正体とは

この看板こそ、不毛なやり取りの元凶なのだ

 結局“リニアエレベーター”がどういったものなのか、何の手がかりも得られなかった。しかし後日改めて調べてみたところ、衝撃の事実が。

 なんとこのエレベーター、本当にリニアモーターで動いていたようなのだ。

 製造元は日本オーチス・エレベーター株式会社。1989年に、同社が手がける「SPEC CRECES」というモデルからリニアモーター式が登場した。世界で初めて実用化したリニアエレベーターである。

 これは常電導リニアモーターを駆動装置としており、カゴには円筒状のリニアモーターが組み込まれている。このモーターが持つ磁力と、壁の磁力を活かしてカゴが動く。まるでリニアモーターカーのようだな。エレベーター全体が円筒の形をしているのも、こういった理由によるものだ。

 リニアエレベーターはロープ式と異なり屋上の機械室を設置する必要がないため、設計の自由度でメリットがあった。当時はその画期的な機構から注目を集めたが、コスト面で折り合いがつかず普及には至らなかったそう。

「21世紀のリニアエレベーター」、その謳い文句は伊達ではなかった。しかしまあリニアモーターがエレベーターに使われていたとは驚きだ。

 そしてこれほど貴重な産業遺産を前にしながら、乗ることができないもどかしさよ。かつて、あの看板に期待して足を運んだ人が何人いただろう。そしてまた店員はその何人もの“物好き”をあしらってきたのだろう。エレベーターに興味を惹かれてやってきた人々がストリートファッションに興味があるとは思えないし、客寄せにもならないはずだ。

 おそらく今日もあの古着屋では、誰も得をしない不毛なやりとりが繰り返されている……。

<TEXT/お雑煮>

-コラム
-, , , ,

Copyright© すごいお雑煮 , 2020 All Rights Reserved.