
お酒菜

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混浴の温泉、なんて素晴らしい響きであろうか。
すっかり少なくなってしまったが、山形県米沢市にある滑川温泉福島屋には、その貴重な混浴風呂がある。
今では新社会人として荒波に揉まれながら、毎日ひーこら働いているが、時間と欲を持て余した大学生だった数年前、当時付き合っていた彼女を無理矢理誘い、秘湯への純粋な興味と不埒な期待と胸に、車を走らせた。
内容が少し前の話となってしまうことはご容赦願いたい。
まずは峠の茶屋で腹ごしらえ

力餅で有名な「峠の茶屋」の美味しいお蕎麦
福島市のインターを降り、米沢方面に至る万世大路をひた走る。そして県境を過ぎて程なくの地点にある、板谷集落で脇道に逸れる。
板谷集落からはJR山形線峠駅へ至る道を辿っていく。なかなか狭い道であるが、離合場所が定期的にあるので、まだ安心して運転できる。
10分ほど走ると、峠駅と力餅で有名な「峠の茶屋」で蕎麦と餅をいただいた。ロケーションもさながら、最高の蕎麦とつきたての餅が食べられるので、機会があれば是非立ち寄ってみて欲しい。
休憩を取った後、いよいよ秘境温泉へ向かって、小径を進む……。
あまりにも険しい道中、死をも覚悟

大自然は、時に厳しい……
台風の残滓が残り、雨が降り頻る中、崖沿いをへばり付いているような小径を進んでいく。
峠駅から先は離合場所も減り、崖側に柵もない道がひたすらに続く。それだけでも緊張するが、前から何故かセダンが!
カーブのふくらみを利用し、なんとか避けようとするが、何故か前方のセダンがどいてくれない。私は山に無理やり車体をごりごり擦らせながらなんとか離合。
増水した川と崩れそうな山、あの時ばかりは人生で初めて死を覚悟した瞬間だった……。
辿り着いた秘境温泉、そのお湯は……

※画像はイメージです
死ぬような思いをしながら、なんとか旅館に辿り着く。
雰囲気のある旅館である。日帰り入浴代500円(安い!)を払い、入館する。館内には宿泊している湯治客と思われるご高齢の方々がいらっしゃる。
浴室が4つあるのだが、そのなかに女性専用風呂が!しかし、露天風呂を含めた残り3つは混浴となっていた。
男女別れた脱衣所で服を脱ぎ、内湯を覗く。誰もいない浴室の石風呂には、波波と白みかかった源泉垂れ流しのお湯が……!
さっそく入る。大雨の影響でぬるいかもしれないと言われていたが、ちょうど良い湯加減、最高の湯質……。その時にはもう、混浴に対する不埒な考えは吹き飛び、最高な温泉を楽しんでいた。
最高な気持ちで彼女と共に風呂から上がり、脱衣所を出た。
そこにおじさんが立っていて、一言。
「あの、入っても大丈夫ですか……?」
彼女と一緒に入ると、あとに入る人たちに気を使わせてしまうので、そこだけは注意した方が良いだろう。
*注釈:滑川温泉福島屋の2019年度の営業は終了しています。営業期間は春〜秋にかけてなので、ご注意を。
<TEXT/お酒菜>