1968年、東大安田講堂の医学部闘争をきっかけに全国に広がった学生運動。そんな中で学生ヘルメットや立て看板に頻繁に用いられたのが、ゲバ文字(ゲバ字)というフォントだ。「ゲバルト」という語源通り暴力的で角ばった書体が特徴で、同時期に毛沢東主導で行われた文化大革命の影響からか、簡体字・略字を使用したものも多く見られる。
そんなゲバ文字は、80年代に入り学生運動が沈静化すると同時に姿を消して行った。今や現存する当時のものはわずかだ。2004年にはゲバ文字のオアシスであった「法政大学学生会館」が取り壊され、2018年には京都大学の立て看板が撤去されている。
しかし、そんな中、未だ都内で貴重なゲバ文字を拝むことができる大学があるという。筆者は高鳴る期待を胸に、中央大学・多摩キャンパスへと向かった。
ゲバ文字の宝庫、中央大学・4号館
東京23区から西東京へ1時間あまり。多摩センターで京王線を乗り換え、多摩モノレールに揺られていると中央大学の広大なキャンパスが見えてきた。ゲバ文字は、同キャンパスの4号館(通称:サークル棟)にあるという。早速中に入ってみると、薄暗く退廃的な雰囲気が漂っている。どうやら、この棟はサークルや研究会の学生のみが使用することのできる施設のようだ。法政大学学生会館と同様、自治権が学生にあるために大学がゲバ文字を撤去できないのだろう。
時折、階段や通路に貼り付けられている「天皇中国訪問阻止」「社会問題研究会」などといったビラが当時を偲ばせる。ちなみに社会問題研究会はすでに消滅しており、研究室はアカペラのサークル室に変わっているようだ。