大阪に日本最古の電車が走ってるって本当?阪堺電気軌道・モ161型に乗る

投稿日:1月 3, 2020 更新日:

モ161

 突然ですが、大都市の電車ってどういうイメージを抱きますか?おそらく、山手線みたいに金属的でピカピカしてて、8両編成とか10両編成の長い車体。そんな車両を連想するのではないでしょうか。

 しかし大阪には、このイメージの真反対を行く電車が走っています。その電車とは、阪堺電気鉄道のモ161型。なんと車齢91年、昭和3(1928)年生まれ。しかもこの車両、運用開始からずっと、時刻表に沿って運行しており、定期運行する車両としては日本最古だとか。

 令和元年。日本を代表する大都市で、戦前生まれの電車に乗る。今回はそんな贅沢なタイムスリップをレポートします。

ビル群に響く重厚なモーター音

天王寺駅前

天王寺駅前に、164号車が入線しました

 モ161型が在籍する阪堺電気軌道は、大阪の南端・恵美須町/天王寺駅前(いずれも大阪市)を起点として、浜寺駅前(堺市)を結ぶ路面電車です。今回乗車したのは、天王寺駅前-あびこ道の区間。新型車両を何本かやり過ごしていると、ゴロゴロと重厚なモーター音が聴こえてきました。モ161型の入線です。

 天王寺駅前は数年前に駅舎が新しくなったため、古い車体とのギャップが顕著に感じられます。

先の乗客を降ろし終えて、いよいよ乗車。ワンステップの乗降口から車内に入ると……すごい。まるで映画のセットのような光景が広がっていました。

164号車の車内。木造の温もりある内装

 モスグリーンに塗られた木造の車内。丸みを帯びた肘掛に、柔らかい橙色のモケット(座面)。軽快なコンプレッサーに車体が小刻みに揺るえ、蛍光灯の仄暗い明かりがたゆたっています。

 路面電車は本数が多いため、停車時間はわずか。乗客を乗せて間も無く、バタバタと扉を閉め、“チンチン”とベルをふた振り、あびこ道へ出発です。電車は、モーターの回転を直接車輪に届ける、吊り掛け駆動方式。今時のハイソな電車と異なり、低音と高音が噛み合って、懐かしい倍音が響きます。グオォォォォオ。歯車の音がする。嗚呼、なんて贅沢な時間なんでしょう。

わずか20分。五感で戦前を感じて

モ161_ベル
車内から大阪の街並みを眺める

 電車は天王寺をあべの筋に沿ってくぐり抜け、松虫駅から専用軌道へ。背後に遠ざかるビル群、モーターは一層けたたましく、速度を上げていきます。次第に街並みは昭和風情の残る住宅街へ。時折通り過ぎる純喫茶や床屋の看板が、今いる時代を忘れさせてしまいそう。まるでこの車内だけが戦前に取り残され、距離が進むごとに時代が遡っているような、そんな錯覚に襲われます。

 天王寺駅からわずか20分。電車は終点・あびこ町へ入線し、再び天王寺駅前へ折り返します。あっと言う間に終わりを迎えた小旅行。しかし車内でみた光景は全てが懐かしく新鮮で、記憶にない時代にすっかり迷い込んでしまった、濃厚なタイムスリップでもありました。

車齢91年。モ161に乗るなら今のうち

あびこ町

あびこ町へ到着しました

 モ161型は現在4両が稼働していますが、運用は日によって異なるので乗れるかは運次第です。基本的に定期運用に就くのは雨期を除いた11月-6月の間が多いそう。確実に乗りたい場合は、運用に就きやすい正月・初詣シーズンがおすすめです。

 日本最古の鉄道といえば、高松の琴平電気鉄道にも、大正14年〜昭和3年生まれの「レトロ電車」が在籍しています。但しこちらは臨時運行がメインで、2021年の全車引退が決まっています。モ161型もいつまで乗れるかは未知数。大阪南部に立ち寄った際には是非、戦前のオールドタイマーに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

<TEXT/お雑煮>

-コラム
-, , , , , , ,

Copyright© すごいお雑煮 , 2024 All Rights Reserved.