片道1800円。「ジャンボフェリー」で行く、高松→神戸の船旅【前編】

投稿日:5月 24, 2020 更新日:

船旅は最高だ。

この日、僕は南海フェリーで徳島へ降り立ち、すっかりフェリーの魅力にとりつかれていた。バスや鉄道の方が早く快適かもしれない。しかし海を渡るとなれば、距離が長かろう短かろう、波のうねり・潮風のそよぎを五感で味わいたい。そう気づいたのだった。

僕は宿泊先でチェックインを済まし、食堂の座椅子に腰掛けると、ほかにも四国と本土を結ぶフェリーがないか調べてみた。するとやはりあるではないか。

「ジャンボフェリー」、高松港と神戸港をわずか1990円で結ぶ中距離フェリーである。25歳以下ならU25割で片道1800円(往復乗船なら片道1600円)だ。

翌朝、午前6時発のJR高徳線へ乗って高松に向かうことにした。

駅前のうどん、シャトルバスから見えるソープ街

風月_うどん

高松駅に着いたのは8時を回ったころだった。今回乗るフェリーは14時ちょうどに出発する上り3便。

“乗船には時間があるので、市街地を散策することにしよう”

そんなことをTwitterで呟いたところ、思いがけず大学時代の先輩から連絡が来て、一緒にランチを取ることとなった。

正午。先輩と合流し、磨屋町「風月」のうどんをご馳走になる。司法修習の最中で、その後は東京の弁護士事務所に配属となるらしい。

「高松に来たならば、風月のかしわ天を味わってほしい」

その言葉通り、かしわ天はごろっとボリューム感がありながらも、くどさを感じない絶品である。皿に盛られた半分をつゆに浸し、もう半分は塩につけて味わう。

「アイツは今元気にしてるの」「あの先輩たちの結婚式、どうでしたか」

うどんを啜りながら、知り合いの近況をザックリ交換する。店を出ると既に13時手前で、先輩はそそくさと職場に戻っていった。良い塩梅だった。

東城街

ジャンボフェリーの乗り場は中心地から2kmほど離れているため、高松駅8番乗り場から無料シャトルバスを使ってふ頭へ向かう。

13:20分、バスは搭乗客を乗せるとバタバタと走りだした。フェリー乗り場に進むにつれ、区画整備された町並みはくたびれた商店街へ、やがて繁華街の再果てに城東町・旧八重垣遊郭が姿を表す。半島型にせり出したソープ街はピンク色の看板に彩られて華やかだが、如何にも港町らしく、潮風にやられくたびれている。

フェリー乗り場から船内へ。バブリーなエントランス

高松_フェリー乗り場

駅から20分ほどでフェリー乗り場に到着。すでにフェリーは接岸していて、船尾からコンテナの積み込みをしていた。バスを降り、チケット売り場で神戸行きの乗船券を発券する。

船旅というとなんとなく高級なイメージがあるが、フェリーならば手頃な値段で楽しめる。たとえば往路で使った南海フェリーは片道2200円、大阪ー別府を結ぶ「さんふらわあ」は8850円、名古屋ー苫小牧を結ぶ太平洋フェリーは11700円と、そんな具合だ。

ジャンボフェリー_エントランス

ボーディングブリッジで添乗員に半券を渡し、船内へ入ると、大理石張りのエントランスが出迎えてくれた。階段にはカーペットが敷かれ、壁面にはステンドグラス装飾。一昔前のグランドホテルに入り込んだようなバブリーさだ。今回乗船した船の名は「こんぴら2」だが、熱海の某ホテルになぞって「ニュー・こんぴら」などと名付けたくなる。

さすが「ジャンボフェリー」の名は伊達でなく、客室は4階構造。南海フェリーは1フロアのみだったので、こちらの方が旅情を掻き立てられる。

四国への後悔を残して……

ジャンボフェリー_離岸

14時ちょうど、出港だ。

フェリーはギリギリと錨を巻き上げ、ゆっくりと港を離れていく。四国を見納めようと甲板に上がり、視界の奥まで連なる山々を眺めていると、わずか2日間の旅程に後悔が募ってきた。

たしかに初めての四国は新鮮だったが、阿波踊りの季節ではないし、唯一訪れた観光名所「栗林公園」もオフシーズン。この旅で楽しんだことといえば、徳島駅前のかけうどんと「風月」のかしわ天くらいだ。

しかも先ほどの先輩によれば、「徳島ではラーメンを食べるべき」だったらしい。せっかくの四国旅、僕はことごとく勿体ないことをした。

嗚呼、あの稜線の向こうを行けば室戸岬があり、土佐の街があり、四万十川が流れていたのに。

そうだ、今回の滞在は“予告編”だったのだ。次に四国を訪れた時に、楽しみをとっておくことにしよう。僕はそう心に決めた。ジャンボフェリーは途中、小豆島を経由して18:45分に神戸港に到着する。およそ5時間の船旅である。

後編に続く

<TEXT/お雑煮>

※新型コロナウイルスの影響に伴い、ジャンボフェリーのりばを結ぶ連絡バスは運休しております。

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