風俗街と聞くと、どんな街を想像するだろう?
大通りから一本外れた、少し薄暗い街や、怖い黒服の男の人が沢山立っているような街を想像する方が多いのでは無いだろうか?
今回紹介する大門(おおもん)は、そんな想像しうる街とは一線を画す存在かもしれない。
日本最大の遊郭だった、大門町「中村遊郭」
遊郭、男性にとっては魅惑の響きであろう。有名なところでいえば東京は浅草・吉原、大阪は飛田新地あたりだが、意外にも名古屋に花街があることは、知らない方が多いのではないだろうか。
かつては名古屋にも「中村遊郭」という、日本最大級の花街があった。
この中村遊郭の中にはかつて、140軒の娼家と約2000人の娼妓がいたが、今では10軒ほどまで数を減らしている。
花街の栄枯は日本全国で聞かれる話だが、ここの街の特筆すべき点は、街の雰囲気である。かつての中村遊郭である、ここ大門町は、人々の日常の中に花街が混ざり合っているのである。
向かい合う日常と色欲
ここを訪れたのは日曜日の夕方だった。太陽が沈みかけているこの場所で、二車線の道を挟んで、混ざり合わないものが存在する。
自転車で家路に急ぐ小学生たち、夕食を買いに来た家族連れ、フードコートで暇を潰して帰る老人たち、その中に紛れて、信号を渡り店へ入っていく人。
この通りを歩いている人々のほとんどは、花街とは無縁の人々で、この混沌とした場所でありふれた日常を過ごしている。私は全国全ての花街を見て歩いているわけではないが、ここまで日常に溶け込んでいる遊郭というのは、珍しいのではないだろうか。
夢の跡地はデイサービスセンターに
写真の建物は、大正元年に建てられた、旧・松岡旅館。遊郭の雰囲気を残し、市の景観重要建築物に指定されている建物である。
この旅館は現在「松岡健遊館」という施設になっているが、この“遊び”とは決して夜の遊びでは無い。なんと、デイサービスセンターとなっているのである。遊郭の建物が残っていることだけでも素晴らしいが、このような活用方法もあるのか……と感心させられる。
ちなみに、過去にこの松岡屋を利用していた方が、長い時を経て再び、この場所を利用していることがあるとかないとか……。
日常と色欲の境目に想いを馳せて……
風俗や遊郭といったものは、犯罪と隣り合わせである側面は否めない。この場所も、子どもたちが沢山通る場所に面しているというのも、褒められることでは無いであろう。
ただ、このような場所だからこそ、子どもたちは浮世離れした世界ではなく、ある意味で身近なものとして、考えられるのかもしれない。
このような場所が、自然な形で残り続けられるような時代を、私は願ってやまない。
<TEXT/お酒菜>