
お雑煮

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2020年5月5日、新型コロナウイルスの感染“第一波”の真っ只中、最初のゴールデンウィークが訪れた。人々が未知の感染症に怯え、外出自粛をするなか、僕は成田国際空港へと足を向けていた。
2年越しに振り返る、2020年GWの成田空港
僕はこの時の光景を、ずっとリポートするか迷っていた。後ろめたさと、高揚感。当時治療の最前線で戦っていた医療従事者の方々、空港関係者の皆様に対しての配慮がない行動であったと反省している。おそらく当時、Twitterに載せていたら”バズ(拡散)”っていただろうし、炎上もしていたと思う。
しかし2022年の今、あえて2年越しにこの光景を伝えたい。
変異株ウイルスの急拡大、特効薬はいまだに生まれない。我々の身の回りでも感染者が増えていく中、経済活動は戻りつつある。そこで2年前の5月5日「子どもの日」、成田空港がどれほど異様だったのか。新型コロナウイルスが我々にもたらした“最初の衝撃”を振り返りたい。
2020年のゴールデンウィーク、いま最も人がいない場所はどこだろう?
「2020年のゴールデンウィーク、いま最も人がいない場所はどこだろう?」
そんな疑問から今回の探訪は始まった。普段は混み合っているのに、時世を受けて人がいない場所。感染拡大の影響で国際線の欠航が相次ぎ、遠出・帰省に重い自粛ムードが立ち込めている今、利用する必然性の低い空港が思い浮かんだ。
家から車を走らせて数時間。成田国際空港・国際線ターミナルの駐車場へ到着した。「3密を徹底すること」「万が一混み合っていたらすぐに撤収すること」をルールに、空港へを足を向けた。
2階の駐車場連絡通路から中央ビルへ。通路から連絡バスやタクシーの停留所を見下ろすことができる。いつもはインバウンドの訪日客や海外旅行客でにぎわうが、この日は人の気配が全く感じられなかった。
リムジンバスが数台と、タクシーは1台のみ。しかし乗り降りしている様子はみられず、ただそこに止まっている、といった様子。
通路を抜け、空港へと入る。しんと静まり返ったフロアに、エスカレーターのこすれる音、自動音声の空港案内がエンドレスで流れている。
無人の国際線ターミナル
エスカレーターを上がって4階の国際線出発フロアへ。この階にはフードコートや雑貨屋の集まるエアポートモールが隣接しているが、店舗はすべてシャッターを下ろしている。これが平日の深夜、トランジットで降り立った光景だとすれば実感が湧くが、この日はゴールデンウィークの真っ只中、「こどもの日」の日中の光景なのである。
空港の出発フロアなのだから、どんなに閑散期であっても人の気配は感じられるものだろう。背筋が凍るのを感じた。突然、自分以外の人類が消えてしまったような、ありきたりな表現だがまさにそんな恐怖だった。
この日の国際線は80%以上の便が欠航となっていた。発着しているのはサンフランシスコ、アムステルダム、クアラルンプール、世界各国の大都市を結ぶわずかな便だけである。
この場所から、世界が切り離されていく
エアポートモールを抜け、発着フロアへ向かうと、さらに衝撃的な光景が広がっていた。あらゆる言語が行き交い、色とりどりの発着アナウンスで賑わうであろう出発のメインフロアに、人が一切いないのである。ときおり流れる欠航のアナウンスが、空間にむなしく反響している。
あたりを見渡すとかろうじてひと組み、搭乗客の姿を確認できた。スーツケースを転がす若い男性と、ハンドバックを背負った身軽な女性。男性は発着ゲートのそばで握手を交わすと、女性を残してゲートの奥へと去っていった。電光掲示板には、ソウル行きの搭乗手続き中と表示されている。
おそらく開港以来初めての光景ではないか。空を飛べば何処へでもいけたはずなのに。いま、まさにこの場所から、世界が切り離されていくのを感じた。
日本だけではない。おそらく、世界中の空港で同じ光景が広がっている。
空港に取り残された女性もフロアを去り、いよいよ空港には誰もいなくなった。
成田空港には「誰もいなかった」
電光掲示板ではアメリカでの感染症拡大を警告していた。まさかこの後、全世界で同様の危機にさらされるとは、まだ想像だにしなかったのだが。
誰もいないとはいえ、空港が“未知のウイルスに最も近い空間”であることは確かだ。いま、世界の玄関口はウイルスの玄関口なのだ。滞在時間が長くなるほど感染リスクは高まる。探訪の目的は達成されたので、これで切り上げることにした。
2020年のゴールデンウィーク、最も人がいない場所・成田国際空港。そして僕はこの広大なターミナルから、これから長い空白の時代が始まることを感じざるを得なかった。
<TEXT/お雑煮>