ポール・スミスが盗作?ファッション業界に根付く「コピー文化」について

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ポールスミス_ダイアル

ポール・スミス日本公式サイトより(2018年)

 2018年、ポールスミスのAWコレクションに加わった腕時計が軽く話題になりました。古いダイアル式電話機から着想を得たという、その名も「ダイヤル」。

 当時は35000-55000円程度の価格帯で展開され、昨今の日本では「そりゃまあ注目されるだろうな」というくらい無難でクラシックなデザインでした。デザイン的にもとてもポールスミスらしいのですが、しかしこの時計、個人的には少し疑問が残るんです。実は、日本のあるメーカーが出した腕時計にデザインがそっくりだったのです

ポールスミスの腕時計に盗作疑惑……?

明和電機_ジホッチ

明和電機公式HPより

 その時計がこちら。2006年にヒットした明和電機の『ジホッチ』です。

 明和電機はアート・エンタメと電子機器を掛け合わせた商品で注目を浴びる電機メーカーで、代表作に音符のオタマジャクシで演奏のできる「オタマトーン」という楽器があります。

『ジホッチ』の大きな特徴は、時計の針が一切ないこと。一見しただけでは腕時計だと気づかないのですが、なんとダイアルを回すと“時報”で時刻を案内してくれるんです。今は絶版になってしまいましたが、当時は東京ハンズでも大きく展開してたので覚えてる人も多いのではないでしょうか。

 今回のポールスミスの新作をみて真っ先に思い浮かんだのがジホッチだったんです。『ダイアル』何処となくデザインもカラーリングも、ジホッチに似ていませんか?これってもしかして、盗作……いやいやポールスミスはイギリスのブランドだし、日本のブランドからデザインを盗むなんて。流石に偶然でしょ。っていう声が聞こえる気がしますが。

 この時計、どうやら本家のポールスミスがデザインしたものではないようなんです。

盗作寸前のデザイン、問題は「ライセンス生産」にあった?

ポールスミス_HP

ポールスミスの海外サイトでは『ダイアル』が表示されない(2018年)

 実は、日本のポールスミスは伊藤忠がライセンスを取っており、デザイナーも一部の商品は日本向けにデザインをしているとか。

 実際、ポールスミスの日本公式サイトでは『ダイアル』が大きくピックアップされていますが、海外向けのポールスミス公式ページでは、AWコレクションに『ダイアル』は存在しないし、カタログで「Watch」と検索しても、「Dial」と検索しても出てきませんでした。

 つまりこの時計は「日本でポールスミスのライセンスを持っている伊藤忠が日本向けにデザインしたもの」のようです。そう考えると、一昔前にヒットしたジホッチをデザイナーが盗作して、『ダイアル』を作った可能性もあり得ますね。確かにレトロフューチャーがトレンドだった2018年、デザインの相性は最高だったはずです。ただポールスミスの様なトラッドなブランドだと、シーズン物の印象って大事になると思うんです。その印象を日本限定のアイテムが下げている気がするのは私だけでしょうか。「日本限定版には洋楽のアルバムにボーナストラックを付けちゃう」そんな余分さを感じますね。

ファッション業界に蔓延する「コピー文化」を憂う

GU_モバイルケース

AJEWのアイテムと酷似するGUのスマホケース(GU公式HPより)

 こういった日本ライセンスのブランド意識の希薄さは『ダイアル』に限った話ではありません。例えばABCマートを手がける株式会社国際貿易商事は、1994年にスニーカーブランド・VANSの国内商標使用契約を獲得して以降、ティンバーランドやレッドウィング、コンバースなどの有名ブランドを連想させるシューズをVANSブランドの名の下で展開していきました。もちろん、アメリカで展開されているオリジナルVANSとは全くの別物です。

 また、ライセンスに限らずファストファッションの世界では盗作寸前の商品がよく表に出たりします。直近では、GUの2019年・秋冬コレクションで展開されたスマートフォンケースがAJEWのケースに酷似していることが発覚し、AJEW側が模倣品を展開する業者に警告書の送付措置する事態に発展しました。

 よくクリエイティビティを考えるときに「コピー」と「オマージュ」の違いが議論されますが、ファッション業界では一部のブランド・代理店によってこの線引きが曖昧にされており、なんとも悲しい現状です。

<TEXT/お雑煮>

(この記事は2018年にnoteにて投稿した文章を修正・加筆したものです)

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