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- 【坂岡ユウのAwesome Secret Base】高見沢俊彦「主義 -ism-」 - 3月 21, 2021
はじめに
みなさんは「高見沢俊彦」の名前にどんなイメージを浮かべるでしょう。新堂本兄弟、エンジェルギター、派手なファッション、天然キャラ……。名前を聞いてピンと来ない方も、誰もが姿を見ると「あっ!」となるアーティストの一人。言わずと知れた、THE ALFEEのリーダーです。
今回紹介するのは、彼のソロ活動最初のアルバム 『主義-ism-』です。
このアルバムはロンドンでレコーディングされ、製作にはロック史・テクノ史の重要人物たちが集結しました。スティーヴ・ヒレッジ(アンピエントギターの先駆者でゴングのメンバーとしても有名)、デヴィッド・モーション(ストロペリー・スウィッチプレイドのプロデューサー)、マイクヴァーノン(フリートウッド、マックのプロデューサーで、初期デヴィッドボウイ作品も担当)、マーティン・ラジェント(ヒューマンリーグのプロデューサー)らを迎え製作されました。作詞、作曲はすべて高見沢さんが担当。これまでバンドで築き上げてきたハードロックやプログレのイメージを覆し、甘くて濃密なアルバムとなっています。
作品紹介

「主義-ismー」(一部イラスト加工済み)
高見沢俊彦「主義-ism-」(ヴァージン・ジャパン)1991年6月12日発売
- Fiance
- 赤い糸
- きみがすきだよ
- 二時間だけのHoneymoon
- 17のときに逢いたかった
- Fire
- Edge of The Moonlight
- Lonely Heart
- Cherie
- Song for You
- 逢いたくて
「高見沢さんがこんなサウンドをつくるんだ!」という衝撃
私がこのアルバムを手に取ったのは、高校二年生の夏でした。たまたま、ワゴンセールに並んでいたのを見つけたのです。もう廃盤になっているものだと信じ込んでいたので、本当にびっくりしました。BEATBOYSやアルフィーの最初期作品と同じく、大人になるまで手に人らないと思っていましたから。(現在はリマスタリング盤が発売され、手に取りやすくなっています)
家に帰りさっそくCDを聴いてみると、いつもの高見沢さんとはまったく異なるサウンドの数々。 「Fire」や「Lonely Heart」のようにハードロックも入っていますが、どこかウエットで情緒的。何より、女性ヴォーカルとのデュエット「Edge The Moonlight」の浮遊感があまりにも衝撃的すぎて。完全に「海外のサウンドや感性でつくられた歌謡曲」という雰囲気で、今聞いても古めかしさを感じません。
ミュージシャンでいえば、キース・ルブラン、ダグ・ウィンビッシュ、スキップ・マクドナルドが「Lonely Heart」で共演しているのが聴きどころです。彼らはシュガーヒルギャングのリズムセクションを担当していました。シュガーヒル・ギャングは「Rapper's Delight」でラップミュージックの名を世界に知らしめたラップの先駆者。他にも、アンダーグラウンドやロックシーンを支えてきた腕利きが集結し、彼らの楽曲たちを聴けば聴くほど「このメンバーでこんなサウンドを作ったのか!!」という驚きが頭の中でいっぱいになります。
「主義-ism-」のそれから
2019年、デビュー45周年を迎えたTHE ALFEEにとって、唯一の小休止期間ともいえる時代が1991年の春でした。高見沢さんはソロアルバムを製作し、坂崎さんはラジオや趣味を満喫。桜井さんは……どうしていたのでしょうか?
1980年代後半から盛んに海外レコーディングをバンド本体で行なってきましたが、パソコンとエレキギターのみを持ち込み、単身でロンドンに乗り込んだレコーディングはその後の活動に大きく活かされました。まず、1992年のアルバム「JOURNEY」ではエンジニアにグレッグヴォルシュを迎え、UKロック調のサウンドを展開。特に「悲しみの雨が降る」は切ない歌詞にエレキギターが泣く名曲です。さらに、続く「夢幻の果てに」ではプログレッシブ・ロックを前面に出し、80年代後半から模索し続けてきた生楽器とシンセサイザーの融合にひとつの答えを提示しました。
90年代以降の彼らはジャンルを超越し、もはや「THE ALFEE」というジャンルを作ってしまったのではないかというほど自由に音楽を作っていきます。いや、ジャンルで括る方が変ですよね。ますます楽曲は複雑になり、還暦を超えた今でもEDMやムード歌謡にチャレンジ。歳を重ねて衰えるどころか、さらに進化を続けています。
おわりに
もうすぐ、私がTHE ALFEEのファンになってから5年。THE ALFEEは活動期間がとても長いので、30年以上応援しているファンや、新しく入ってきたファンもたくさんいます。みなさんに共通しているのは、とにかく推しに対しての愛情が深いということ。実際、私も音楽をここまで好きになったのは彼らに出逢ったからですし、往年のミュージシャンを聴き始めたのもテレビやラジオなどで紹介されたのを聴いて「面白そう!!」と飛びついたから。
ジャンルや時代で括れず、すっと進化を止めない。こんなバンドは他にありませんし、後年のファンや学者たちがどう彼らを語るのかが今からとても楽しみです。
この連載ではカルチャー方面を中心にさまざまな作品を紹介しますが、第一回はカルチャーに興味を持つきっかけとなったTHE ALFEEのメンバー、高見沢俊彦さんのソロアルバム「主義-ism-」を紹介させていただきました。
<TEXT /坂岡ユウ>