富山地方鉄道の14720形が引退。「日車ロマンスカー」に想いを馳せて

投稿日:12月 16, 2019 更新日:

富山地方鉄道_14722

来たる12月21日、富山地方鉄道で活躍する14720形14722号が現役を引退する。1962年の落成から57年に渡り活躍を続けてきた、富山地方鉄道で現役最古の車両だ。

製造は日本鉄道車両(以下、日車)。2扉でクロスシートを配した優等列車さながらの仕様が特徴で、初代・小田急ロマンスカー(3000形)の派生グループとして「日車ロマンスカー」という愛称で親しまれてきた。

最盛期には北陸鉄道・長野鉄道・福井鉄道・秩父鉄道など、各地域で活躍した日車ロマンスカーだが、今回の17422号の引退を持って全形式が消滅することとなる。筆者は最期の勇姿を見届けるべく、富山へ向かった。

鉄道コレクションで「富山地方鉄道14720形+14790形 3両セット」の発売が決まりました!2020年9月ごろ発売予定です。

ターミナルに入線。懐かしの“2枚窓”

富山駅_到着

電鉄富山駅に入線した14722号

東京から新幹線で3時間あまり、富山駅に降り立った。富山地方鉄道の車両は南口、電鉄富山駅ビル「エスタ」に発着する。

コンコースに着くと三角屋根を構えた4線ホームが見えてきた。その重厚で無機質なつくりは往年のターミナルを彷彿させるが、富山駅高架化事業により2022年までに移設してしまうらしい。

切符を購入してしばらく待つと、筆者が乗車する岩峅寺(いわくらじ)駅行きの入場整理が始まる。有人改札で切符を通しホームに立つと、ポイントの向こうからゆっくりと14722号が入線してきた。前面の大きな2枚窓・柔らかな曲線を持った車体、60年代に流行したスタイルだ。電車は停止位置に止まると、大きく息を吐いて乗客を降ろした。

日車ロマンスカーの薫りに心酔

14722_車内

ずらりと並んだクロスシート

車内に乗り込むと、富山地鉄の特徴であるオレンジ色の座面を持った座席が目に入ってくる。扉と扉の間にずらりと並んだクロスシート。ああ……これが「日車ロマンスカー」か。クッションの効いた座面に深く腰掛けると、かつて鉄道が主流だった時の記憶が溢れてきそうだ。宇奈月温泉に向かう温泉客、立山へ向かうスキー客。多くの人々がこの座席に腰掛けて、レジャーを楽しんだのだろう。車内には、電車が57年間見守ってきた数多くの思い出が染み込んでいる。まさにロマンス・カーである。

定刻。電車は肩開きの分厚いドアを転がして、岩峅寺に向かって動き出した。

希少な自社発注車、14722号。引退後は……

電鉄富山駅_ホーム

ラストランを終えると、東急の新型車両に引導を渡す

空気バネのゆらゆらとした乗り心地を堪能しながら、南へ進む。モーターは東洋電気の中空軸平行カルダン。初期型特有の、奥ゆかしい倍音が心地良い。当時は吊りかけ駆動に変わる最新型のモーターだったが、今やこの音が聞けること自体、有難い。

近年、地方鉄道では中古車両を導入する事例が相次いでいる。そんな中、14722号は自社発注の車両として、今なお現役で活躍する希少な存在だ。いざ乗ってみると、当時最新鋭のモーター・優雅な座席配置・流行を抑えた車体デザインなど、車両の隅々から当時の富山地鉄の誇りを偲ぶことができる。できればもう少し頑張ってもらいたい……と思うのは、鉄道好きのエゴだろうか。14722号は21日のラストランを終えると、東急から譲渡された新型車両に引導を渡す。

残すところあと1週間。57年間の記憶を抱え、14722号はラストスパートを駆ける。

<TEXT/お雑煮>

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