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紙の種類を使い分けて鉄板の溶接を表現している。
まずは上の写真をご覧ください。かつて常磐線や信越線などで活躍していたD51 75号機の鉄道模型です。各パーツが精密に再現され、耳をすませば床下から力強いブラスト音、肌にはじとっとしたボイラーの熱気を感じ、今にも動き出しそう。
実はこの作品、車体から台車まで、すべて紙でつくられているのです。製作者は鉄道モデラーの、飽き性モデラー( @get_bored13 )さん。なんと小-中学生の頃に、D51 75号機をはじめ複数の鉄道模型をフルスクラッチしたそうです。
今回「すごいお雑煮」では、飽き性モデラーさんにインタビュー。“紙製”鉄道模型が産まれた経緯を聞いてみました。
Yシャツの厚紙から鉄道模型をつくった

中学2-3年生の頃に製作したという、D51 75号機。
ーー“紙製”鉄道模型は、飽き性モデラーさんが小-中学生の頃に自作された作品なのだそうですね。なぜ、紙で鉄道模型を作ろうと思ったのですか。
本当はNゲージ(1/150スケールの鉄道模型)が欲しかったんです。近くの玩具屋さんにNゲージのジオラマと車両が置いてありまして、小学生の低学年ながらとんでもない衝撃を受けた事を今でも覚えています。もちろん、親にオネダリしましたが、値段も値段なので惨敗。泣いて帰りました(笑)
ある時に、親父から言われたんです。「お前、自分で作れば良いじゃん!」
小さいころから、物作りや絵を書いたりするのが好きで、学校での図工の評価は高かったんです。それを知っていたからの発言なのかは分かりませんが、この一言で鉄道模型の自作がスタートしました。
ーー素材には、「Yシャツを買った時に付いてくる厚紙」を使っていたそうですね。
紙で作るというスタンスは変えずにずっと作っていたんですが、なんとかく紙を買うってもったいない?みたいな感覚がありました。そこで近くにあったシャツに入ってる厚紙を手に取ったんです。意外としっかりしていて、メーカーによっては光沢が強い物や、薄くて曲げに強いものなどあったんで、私的には扱いやすくそしてタダで入手できるので、最高の素材でした。
製作期間は1年。台車の動きまで完全再現!
ちょっと恥ずかしいんですが、飽き性モデラーは小さいころからものづくりが好きで、色々作ってました。
お金ないのでシャツに入ってる厚紙なんかを集めて、塗装はポスカと言うとんでもないことしてました。
一応フルスクラッチのペーパークラフトですw
落成:小学6年#HK100#ペーパークラフト pic.twitter.com/LvMjxpkfqK— 飽き性モデラー (@get_bored13) June 20, 2020
ーー6月には、小学6年生の頃に作成された「北越急行HK100形」のツイートが話題になりました。
この「HK100」は今の活動の原点的な車両ですので、やっぱりかなり思い入れがあります。稼働ギミックをつけたのもこの車両からですし。車輪が実際に回り、台枠も動くのでレールを作ればカーブだって走れるんですよ!

台車は実際に回転。サスペンション機能も付いている。
特に気に入っているのが台車で、軸受けのところで車軸の回転がわかるようになっています。また、写真では分からないのですが、エアサス部分にバネを入れてあるので、なんちゃってサスペンション機能もあるんです。
あまり人目に触れることがなかったので自己満足の世界でほとんど終ってたのですが、今回Twitterに掲載したことで、多くの方々から評価していただけて嬉しいです。
ーー作品のそれぞれが、細部にわたって再現されていて驚きます。
一番最初に作った電車は、マッキーの小さい箱に画用紙を巻いて、絵を描いて終わりというお粗末なものだったので、数時間で完成しました。しかし、作っているうちに欲が出てきたんです。台車をちゃんと作りたいとか、パンタグラフを作りたい、室内を、車輪が回るように、と。もちろん、製作期間もそれによって伸びてきまして、最終的にはゆっくり作成して1年ほどかかりました。
「実車をそのままスモールスケールにする」。飽き性モデラーさんのこだわり

中学一年生の頃に製作した115系。アルミシールを使って室内を再現した。鋼鉄車体の重厚さが漂う。
ーー模型の製作に必要なスキルはどのように身につけたのでしょうか?
技術というほどのものではないですが、ほとんどが独学です。失敗の繰り返しです。その中で色々な技法を身につけて行きました。 一番最初に知ったことは、紙には繊維の向きがあるということです。曲げる作業をしている時に、「前回は滑らかな曲線を作れたのに、何で今回はゴツゴツするんだ?そうか!曲げる事に適した向きがあるんだ!」みたいな感じで1つ1つ失敗と発見の繰り返しでした。
ーーそれぞれの作品が、床下機器から室内まで精密に再現されています。細部の情報収集はどのように行っていたのでしょうか。
とにかく「よく見る!」「ガン見!」ですね。電車に乗った時にインスタントカメラで写真を撮ってました。普通の人からしたらなんでそんなところ撮ってるのと言われかねない写真ばかりです(笑)後は、ネット上の画像などで情報を補填していました。

飽き性モデラーさん製作の、EF64 1030号機。貫通扉が開閉する。
ーー現在はNゲージの加工専門で製作活動をされていますが、こちらも緻密な作品ばかりで、小-中学生時代の模型製作で培ったエッセンスを感じました。
作成にあたって、「実車をそのままスモールスケールにする」という事を目標に作成してきました。特に下回りを実車に近づけることでよりリアルに仕上がります。 服装も「足元から」と言うように、「模型も下回りから」と言ったところでしょうか。
最近の作品を見ていただくとわかりますが、下回りの配管等を極力表現しています。 貫通扉を開閉できるようにしたり、作業灯、EG灯(電気暖房表示灯)を点灯化したりなど、通常の状態では物足らなくなってきています。今後も新しい技術を身につけて日々精進いたします。
ーーどうも、ありがとうございました!
編集後記
まったくの“白紙”からの模型製作。実写の観察から始まり、紙の素材を選定し……時間と愛情をかけて自分だけの車両を仕上げていく。模型製作の奥深さ・面白さがギュッと詰まったインタビューでした。
飽き性モデラーさんの作品たちは、Twitterアカウントから見ることができます。気になる方は是非アカウントをフォローしてみてください!
<TEXT/お雑煮>