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「千葉市ゆかりの家・いなげ~愛新覚羅溥傑仮寓」は、千葉県千葉市稲毛区にある歴史建築。一見普通の古民家のように見えるが、中国清朝のラストエンペラー愛新覚羅溥儀の実弟である溥傑夫妻が新婚生活を過ごした場所として、知る人ぞ知る名所だ。
その歴史だけでなく、建築としても見ごたえがある「千葉市ゆかりの家・いなげ」。
その隠れた魅力を紹介する。
溥傑夫妻が新婚生活を過ごした家

千葉市ゆかりの家・いなげ
千葉市ゆかりの家・いなげは京成稲毛駅から徒歩圏内。稲毛浅間神社の傍にある。
もともと、稲毛浅間神社の手前まで海だった。その海を稲毛海岸と呼び、明治21年に療養用の海水浴場として開設されると、別荘地として多くの建物が建った。その中のひとつが、「千葉市ゆかりの家・いなげ」である。大正期につくられたこの別荘は、平屋の母屋と庭の離れがあり、千葉市地域有形文化財として、保養地だった頃の稲毛の歴史を伝えている。
昭和12年には、中国清朝のラストエンペラーである愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)の実弟・溥傑(ふけつ)夫妻が半年ほど新婚生活をこの別荘で送ったという歴史がある。
近くにあった陸軍歩兵学校に在籍していた関係から、この場所で暮らしていたそうだ。二人は政略結婚ながらも、仲睦まじい夫婦で、建物内に展示されている写真からもその様子が伝わってくる。
和室と洋室・日本の美しい建築
玄関から建物へ入ると、和室2間と洋室が見える。思わず声がでてしまうほど、精巧なつくりの建物だ。
洋室は和室とはまた違った雰囲気で、大正ロマンを感じる。
右手には客間が2部屋。そして庭の新緑が眩しく照らしている。客間から眺める景色は、京都にも引けを取らない日本の美しい文化が伝わってくる。
和室では、溥傑夫妻の新婚当時の写真が展示されており、仲睦まじい様子から、この別荘ではどのような想いで暮らしていたのだろうかと想いを巡らせる。また、稲毛海岸が埋め立てられる前の貴重な写真も見ることができる。
建物の内部には、至る所に意匠が凝らしてあり、入館料が無料というのは正直勿体ないのではないかと思うほど、素敵な空間が広がっている。格子や障子のガラスは、普段目にすることができないほど、貴重なつくりだ。

格子
観覧料は無料。また、混雑している様子もなく、ゆっくり建物内を撮影することができた。落ち着いて日本の良き文化を感じたい方は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。かなり穴場の名所である。
<TEXT/明里>