総武線の中でも、特に用事がない限り、降りることも少ないと思われる「平井駅」。江戸川区に位置する。総武線の各駅停車しか通っていないため、東京駅からの距離が遠く感じるのも無理はない。
しかし、そんな街にも「平井三業地」が広がっていたという情報を聞きつけた。今回は、そんなマイナーな街に眠る花街の名残を散策する。
平井駅南口に広がるスナック地帯
平井駅南口を降りて駅前から少し離れると、昭和感のある通りに出る。このあたりが、平井三業地があった場所だろうか。そんな匂いを感じさせる佇まいの建物が広がっている。
独特な形をした、鋭くとがった建物。この類の跡地を散策するとこのような形状の建物をよく見かけるのは気のせいだろうか。
スナックが広がる路地裏。赤線の名残を訪ねるとお馴染みの景色。
そしてこの向かいには、大きな鍵が目の前に広がっている。
「サパークラブ・鍵」という名前の通り、鍵を主張しているのだろうが、焼け具合といい、色味が下町の雰囲気を匂わせている。
この鍵のモチーフ、かなり立体的に精密に作られているので、ある意味“インスタ映え”するスポットなのではないかと思う。訪れた記念に写真撮影をしてみてはいかがだろうか。
料理店の鑑札が残る料亭
関東大震災後に移住してきた人々によって花街として賑わい、その後石油ショックの頃まで存在していたと考えらている平井三業地。
そんな花街としての名残も消えつつある平井において、唯一昭和から現役で営業していた料亭が「料亭まじま」である。
空襲による被害のため、戦後に再建されたと言われている。最盛期には、このまじまを中心に10数件の料亭が連なっていたという。まじまは現在、営業しているのかは不明。
玄関口のガラスには、よく見ると、戦時中によく見かけるようなバッテンのテープ跡がかすかに残っている。いつの対策なのか、気になるところである。
外から中を少し伺ってみると、立派なひな人形が飾られていた。建物の外見の立派さ以上に、建物の室内はさらに立派な装飾、佇まいである。外からちらっと覗いただけであるが、格式高い様式に後ずさりしてしまった。
人に忘れられてひっそりと佇んている今、当時の繁栄を想像し、寂しい気持ちになる。時代の波に飲まれて、取り壊しにならないことを願いたい。
まじまの鑑札は撮り損ねてしまったが、近くにある料亭にも同じ料亭の鑑札(かんさつ)が残っていた。鑑札が当時のまま残っているのは貴重。花街を散策する際の1つの指標になるので、押さえたいポイントである。
こちらは、夕方になると女将さんらしき方が出入りし、電灯に明かりが灯すのを確認できたので、こちらは現在も営業していると思われる。
ひっそりと残る花街の名残と商店街の活気
平井に残る花街の名残は、料亭まじまを残すのみとなってしまっているが、表通りに行くと、大きな商店街が広がり活気の溢れる下町である。
一回歩いただけでは、飽きない街、一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
<TEXT/明里>