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千葉県の香取市に広がる佐原は、江戸時代以降、水運で繁栄した街。令和の現在も当時の雰囲気を残す歴史的建造物が密集している、歴史好きにはなんともたまらない街だ。
また江戸時代に、定年になってから全国を歩いて測量して初の日本地図を作成した偉業を持つ、伊能忠敬の生家も残る。最近では、伊能忠敬を大河ドラマの主人公に推薦する取り組みも行われており、地元では知らない人はいない有名人。
今回は、そんな観光名所として有名な佐原の街に潜む花街らしき裏道をご紹介する。
佐原駅前から昭和感の漂う場末な商店街

観光案内所の看板が観光客をお出迎え
JR成田線を降りて、新しく改装されたと思われる駅舎とその周りを抜けると、一気に昭和を感じる建物が連ねる通りに出会う。

昔は地域の最先端を発信する場であったのだろうか。地元の客の年齢層も建物の風化と相まっている。
通りを歩いていると現れる「PLAZA DE ARCOS」は、買い物客とみられる地元の方が出てきたので、今なおいくつかのお店は現役で営業中のようだ。
イタリア語に模したと思われるネーミングセンスも、今になってはなんだか寂しい。
水郷の歴史地区以外にも、見どころのある建物が数多く残っているので、またの機会に紹介したいと思う。
今なお立派な町並みが現存する佐原の町並み
駅から少し歩くと、小野川沿いの町並みに出る。
水郷佐原の面影は「小江戸さわら舟めぐり」に残っており、船頭の方々が休憩している風景は、まさに江戸時代の様子を垣間見ることができる一コマ。
そして可愛らしいひな人形が、川沿いに静かに水郷を見守っていた。昔のひな人形はこのように飾られていたのだろうか。貴重な風景を見ることができた。

川沿いに設置してあるひな人形。木製の木箱が佐原の町並みの雰囲気に馴染んでいる
飲食店から観光案内所まで、様々なお店が古い建物と共存している小野川沿い。普通に散策していると、綺麗に整備された観光地であり、パッと見はディープなスポットなど無縁のような風景が広がっている。
華やかな観光通りから、少し裏に目を向けると現れる裏通り

裏路地から見た表通り。右手が「カメラのキタムラ」、左手が「 ワーズワース」の建物
どうやら、建物の間の細い路地に目的の場所が潜んでいるようだが、私も二周してやっと気づくことができた。それくらい、人々の目から逃れた場所に眠っている。
その路地裏は、小野川沿いの廃墟感の漂う「カメラの三越」と、喫茶店「ワーズワース」の建物の間。
その間を一歩踏み入れると、興味深い名前の看板がぶら下がる何やら怪しい雰囲気の通り。このあたりが、花街の名残なのだろうか。

表通りから裏路地を眺める。一気に暗い雰囲気に
まず、ひと際目を引くのが「焼肉会館」。現在は営業していないようだが、会館というくらいなので、当時は多くの人が集まるような場所だったのだろう。
その次に見えるのが、提灯の形をした看板に書かれた「おっかあ」。

のれんの状態も比較的新しいように感じる
故郷の母を思い出すような、温かいネーミング。こちらはのれんが出ているので、現役なのかもしれない。
おっかあの先には、「スナックポトス」が出現。
丸い看板と、窓の装飾が表通りの和の雰囲気とはまた違った顔。
その隣のレンガ調の建物「呑処一葉」は見物である。全面がレンガの装飾が施してあり、路地から入る夕陽に照らさせて幻想的な雰囲気が広がっていた。
「レンガ調が写真映えしそう」と感じて、調子に乗って人物写真ばかり撮ってしまい、反省。映り込んでいますが、ご了承ください。
路地裏の暗さと、隙間から入る陽の光のコントラストが人間の光と闇を映し出しているような。
一面レンガ調の壁。窓が塞がっていることに少し違和感。

一階から三階まで続く螺旋階段
螺旋階段も良い色味に焼けている。螺旋階段の美しさは、廃墟好きの感性と似ているものがあるかもしれない。
花街としての名残が少しでも残っていないか、注意深く探索していると、瓦礫の散在しているステンドガラスの扉が目に付いた。

扉にはステンドグラスの装飾が
扉のガラス部分は廃れているが、よく見ると綺麗な装飾。写真の左に写る、壊れたなにかも気になる。
扉に近づき、よく見てみると、扉の木枠に鑑札(かんさつ)を発見。

風俗営業(料理店)と書かれた鑑札
うっすらと、風俗営業(料理店)の文字が読み取れる。この鑑札が、佐原に花街が存在したことを示す唯一の証かもしれない。
建物の柱にも、タイルの装飾が施してあり、当時の面影が残っているようだ。

柱に残る、モザイクタイルのパターン
江戸と昭和の名残を残す佐原
上記の場所だけでなく、佐原の路地裏は一歩踏み入れると入り組んでいるだけでなく、見たところ古い建物が手付かずで残っていて、散策が捗る街だ。
江戸から昭和の名残を感じれる、そんな日帰りタイムスリップ旅を楽しんでみては?
< TEXT/明里 >