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昭和、高度経済成長期の象徴とも言える三輪トラック、「ダイハツ・ミゼット」。映画『三丁目の夕日』で主人公一家が愛用していたこともあり、アヒルのような独特な形を覚えている人も多いだろう。
軽自動車規格の車両ということもあり、日本では絶滅危惧種。しかし、日本から4000km以上離れたタイ・アユタヤでは、まだまだ現役のミゼットに乗ることができるのだ。
タイ・アユタヤで活躍するミゼット
タイではバス・タクシーよりも安価な移動手段として、バイク運転手の後部にまたがる「バイタク」、3輪バイクの後部座席に乗る「トゥクトゥク」、小型トラックの荷台に乗る「ソンテウ」などがある。
今回ご紹介するのは、タイ最大級の遺跡で有名なアユタヤ県で活躍するトゥクトゥク。バンコクではバイク型のトゥクトゥクがほとんどだが、面白いことにアユタヤではミゼットが種車として普及しているのだ。
その勇姿を目に焼き付けるべく、筆者はバンコク・フアランポーン駅からスリン行きの普通233列車に乗りこんだ。
列車は1時間ほどでアユタヤ駅に到着。アユタヤ遺跡観光の拠点ということもあり、駅舎は綺麗に整備されており、賑わっている。
さて、駅舎を抜けて左手、タクシー乗り場に目を向けると……。いた!ミゼット型のトゥクトゥクがずらりと待機しているではないか。
アヒルのキャビンに、こじんまりとした荷台。まさに僕が思い描いたミゼットそのものだ。強いて言えばなんとなく、ヘッドライトが四角い気がする?ミゼットってこんなに厳つい顔だったっけ?
アユタヤのミゼットはいかつい?
駅の近くを散策してみるが、走っているトゥクトゥクはミゼット型ばかり。バイク型の車両はみられず、まさに「ミゼット天国」である。乗車してみたかったが、この日は交通費・食費含めて1000円しか持ち合わせておらず、泣く泣く断念した。
中には運転席に巨大なウーハーをつけて、金色のホイールでカスタムしたシャコタンミゼットもある。日本の旧車ヤンキーよろしく、爆音でEDMを流しながらアユタヤ遺跡を駆けるのだろう。
原型のミゼットMP型に遭遇
自転車で遺跡周辺を散策していると、少数だが原型のミゼットにも出逢うことができた。くりっと丸いヘッドライト。これぞ間違いなく『三丁目の夕日』で鈴木一家が乗り回していたミゼットである。日本では人生で1度か2度、古い家屋の車庫に止まっているのを見た記憶があるが、動いている姿は見たことがない。しかしここアユタヤでは今なお現役。軽快なエンジンをふかすとバタバタと走り去っていった。
個人的に最も印象に残っているのが、ワット・マハタート近くの交差点に止まっていた原型ミゼット。フロントは塗装が剥げ落ち、一面が茶色く錆びている。ドアから荷台にかけてはオリーブドラブ色に塗り直されているが、こちらも塗装がひび割れ、ところどころ下地がむき出しになっている。非常にシャビーな車両だ。
こんな時代の流れるままに朽ちていく老兵ミゼットで、のんびりとアユタヤを走り回ったらどんなに楽しいだろうか。
アユタヤで活躍する二代目ミゼットに乗ろう
さて、ドミトリーに戻ってアユタヤのミゼットについて調べてみた。
ミゼットがタイにやってきたのは1960年代半ば、ハンドルが丸型のダイハツ・ミゼットMP型(二代目ミゼット)がこれにあたるらしい。当時、ミゼットは無駄な装飾を廃し価格を抑えた車両で、輸出仕様車の多くがタイに輸出されたそうだ。どうやら駅前で見かけたヘッドライトが四角いミゼットはタイ国内で作られたようで、ボディを新造し、駆動部はミゼットや他の部品を使って組み上げたカスタム車らしい。丸いヘッドライトの車両がオリジナルの外装を持つミゼットだ。
60年代当時はバンコクでも多くが活躍していたが、現在はほとんどが置きかわった模様。しかし、アユタヤなどの地方都市ではまだまだ現役のミゼットに出逢えそうだ。
製造から半世紀以上の時を経て、今なお現役で走っているミゼットMP型を拝めるのはとても貴重。タイ旅行の際はぜひ会いにいってみてはいかがだろう。
<TEXT/お雑煮>