JR・地下鉄・私鉄各線が集まり、東東京のハブとして機能する街。北千住。足立区の中枢ともいえる同地だが、東西に飲み屋街にキャバレーがひしめき、駅前の徒歩圏内には公営住宅と銭湯がいまなお多く、下町情緒が強く残っている。
今回はそんな街の特徴を一箇所に凝縮したようなスポットをご紹介。飲み屋横丁の長屋建築群だ。
一直線に並んだ長屋建築にウットリ
飲み屋横丁の生い立ちには諸説あるが、60年代後期、営団地下鉄(現・東京メトロ)千代田線の開業と共に生まれたと言われている。駅建設の区画整理でホームの上に一直線の空き地が生まれ、飲み屋横丁の長屋はこの上に立てられたというわけだ。
事実、北千住駅の改札を抜けて仲町出口を降りると目の前にズラッと綺麗に並んだ長屋建築が姿を表す。これはなかなかお目にかからない大スペクタクルであろう。
こちらは裏手側ではあるが表側は小道が入り組んでいるため、直線美を堪能するためには裏手側の鑑賞を強くお勧めしたい。
求められた混沌。換気扇・配管を心ゆくまで拝む
店舗ごとに異なる換気扇・室外機、配管。一見混沌としているけれども、全てが必要に求められ、最適なバランスで配置されているのだ。一見すると混沌とした風景だが、なぜだろう、絶妙な安定感がある。裏手側でしか味わうことのできない感動だ。
ちなみに裏手側は通りに面しているため、勝手口も店舗入り口として使われているようだ。
長屋の名物フォトスポット「パブ・サンドリーム」
この長屋建築でもっともフォトジェニックな場所といえばここ。「パブ・サンドリーム」の看板である。金属的で重量感のある横看板。雨風にやられて金属がくたびれた様は、パブという華やかなイメージとは対照的で落ち着きを感じる。
既に店は無くなってしまったようだが、この看板だけは今なお長屋の賑わいを見守っているのだ。全盛期、この看板は何色に輝いていたのだろうか。想像するだけでくすぐったい高揚感に駆られる。
北千住の良心。「飲み屋横丁」へ是非訪問を
近年では足立区のイメージアップ戦略もあり、若者やファミリー層からの人気も高い北千住。そんな時代の流れの中でも、この長屋群は呑兵衛の拠り所として、今なお当時の息吹を感じることができる。
この街がどことなく暖かく人情を感じるのも、こういった「街の良心」が生き続けているからなのかもしれない。まさに一生モノの長屋建築ではないか。
〈TEXT/お雑煮〉